宅建業者による「人の死」の告知基準

2022年01月20日

前居住者が死亡した経歴のある物件、いわゆる「事故物件」
映画のタイトルにもなっていたり、普段不動産にかかわりのない方も聞いた事がある単語ではないでしょうか?
こういった人の死が関連している不動産は、市場に多く存在しますし、一言で事故物件といっても様々なケースがあります。

 

過去に人の死が生じた物件の取引を行う際、どこまで告知するかについて、これまでは明確な判断基準がありませんでした。
そのため、売主さんや買主さんが不快な想いをしてしまったり、トラブルの原因にもなることもあったそうです。

 

そこで2021年10月、国土交通省が「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定し公表しました。


国土交通省公式ページ
https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo16_hh_000001_00029.html

 

 


では、どのようなケースに告知をされるのか、反対に告知がないのか、ガイドラインが示した3つのパターンについて、お話しします。


①賃貸・売買取引どちらも告知不要の場合


⇒対象不動産で自然死又は日常生活の中での不慮の死が発生した場合

 

・自然死 ⇒ 老衰、持病による病死 等
・不慮の事故死 ⇒ 自宅の階段からの転落、入浴中の溺死、転倒事故、食事中の誤嚥 等

 

昨今、高齢の方の一人暮らしも増えており、そういった中で発生した事故には告知義務はありません。
ただし、上記の死亡事案であっても、長期間にわたって放置されたことなどで、特殊清掃や大規模リフォーム等が行われた場合、買主・借主が契約を締結するかどうかの判断に重要な影響を及ぼす可能性がある場合には、告知をしなくてはいけません。

 

 

②賃貸取引で告知不要の場合


⇒対象不動産・日常生活で通常使用する集合住宅の共用部分で発生した①以外の死、特殊清掃等が行われた①の死が発生し、発生から約3年間が経過した後


例えば、対象物件の隣の部屋や、マンションのエントランスや階段、屋上などの共用部であった自殺や事故についても、ガイドラインでは告知義務なしとされました。


告知が必要なケース


上記のようにガイドラインで告知義務の判断基準が示されましたが、これらの基準に該当しないケースでも、告知が必要とされるケースもあります。
例えば、新聞やネットなどでもニュースになったような社会的に知られている事件などが該当します。

このような場合には、発生場所や事件の様態に関わらず、宅地建物取引業者が告知する義務が発生します。

 


③賃貸・売買取引どちらも告知不要(対象不動産以外)


⇒取引の対象不動産の隣接住戸・日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分で発生した上記①以外の死・特殊清掃等が行われた上記①の死

 

ちょっとややこしいですね。
③は賃貸、売買の場合、直接の取引対象ではない隣接住戸や日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分については、原則告げなくてもよいとしています。
ただし、②と同様に事件性、周知性、社会に与えた影響等が高い場合はこの限りではありません。

 

 

上記、とても簡単にまとめましたが、このようなガイドラインになっています。

 

ただ、大原則として取引に関わる買主様 又は 借主様のご意向が最大限優先されます。


ガイドラインに定められた告知義務があるなしに関わらず、人の死に関する事案が、買主・借主様の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合には告知しなければなりません。


大事なことなので大きく、太く記載しています。
土地の果実では、ガイドラインにかかわらず、なるべくお客様にお伝えしていますし、場合によっては告げる必要があると考えています。

 

大きな買い物となる不動産購入には、物件選びだけでなく、きちんと説明責任を果たしてくれる不動産屋とお付き合いをしたいですね。

 

 

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